来年4月から解禁?ライドシェアについて調べてみた

 ライドシェアとは、一般ドライバーが自家用車を使って有料で乗客を運ぶサービスのことです。海外ではUber(ウーバー)やLyft(リフト)などの大手企業が展開していますが、日本では現在法律で禁止されています。しかし、2023年10月に岸田首相がライドシェアの解禁を目指すことを表明し、政府の規制改革推進会議の作業部会が2024年をめどに新法制定の検討を提言しました¹²。この記事では、ライドシェアの解禁に向けた動きやメリット・デメリット、海外の現状などを紹介します。

ライドシェアの解禁に向けた動き

 ライドシェアの解禁に向けた動きは、主に以下の3つの理由から加速しています。

  • タクシー不足:コロナ禍でタクシー運転者数が約19%減少し、タクシーの需要と供給のバランスが崩れています³。特に観光地や地方都市ではタクシーの待ち時間が長くなり、利便性が低下しています。ライドシェアはタクシー不足を補う移動手段として期待されています。
  • 高齢化と運転免許自主返納者の増加:過疎化によりバスの路線廃止やタクシーの廃業などで、高齢者の交通手段が限られています。運転免許を返納すると、病院や買い物への移動が困難になります。ライドシェアは高齢者のラストワンマイル・モビリティとして期待されています⁴。
  • 新規事業の創出と競争力の強化:ライドシェアは自家用車の所有者に副収入の機会を提供し、自動車の資産活用を促進します。また、ライドシェア事業者はデータや技術を活用して、新たなサービスやビジネスモデルを開発できます。ライドシェアは日本の経済成長とイノベーションに貢献できると考えられています⁵。

ライドシェアのメリット・デメリット

 ライドシェアには、利用者や提供者、社会にとってのメリットとデメリットがあります。ここでは、それぞれの視点からライドシェアのメリット・デメリットをまとめました。

視点 メリット デメリット
利用者
  • 移動手段の選択肢が増える
  • 交通費用を抑えられる
  • 料金を事前に把握できる
  • 安全性の懸念(ドライバーの資格や車両の整備など)
  • 事故時の補償の不明確さ(任意保険の適用や事業者の責任など)
  • サービスの品質のばらつき(ドライバーの接客や運転技術など)
提供者
  • 副収入を得られる
  • 手軽に働き始められる
  • 自分の都合に合わせて働ける
  • 労働待遇の不安定さ(医療保険最低賃金など)
  • 事故やトラブルのリスク(自己責任や訴訟など)
  • 車両の消耗や維持費の増加
社会
  • タクシー不足の解消
  • 高齢者の移動支援
  • 新規事業の創出と競争力の強化

海外のライドシェアの現状

 海外ではライドシェアがすでに普及しており、市場規模は年平均20%のスピードで拡大しています⁶。2020年時点の世界市場の規模は約9兆9,000億円と推定されています⁶。ライドシェアの代表的な事業者は以下のとおりです。

  • Uber(ウーバー):米国発のライドシェア最大手で、世界80カ国以上で展開しています。2019年5月に上場し、時価総額は約8兆円です⁷。自動運転や飛行タクシーなどの先端技術にも投資しています。
  • Lyft(リフト):米国発のライドシェア2位で、米国とカナダで展開しています。2019年3月に上場し、時価総額は約1兆円です⁸。自動運転や電動自転車などのマイクロモビリティにも注力しています。
  • DiDi(ディディ):中国発のライドシェア最大手で、中国や東南アジア、南米などで展開しています。2021年6月に上場し、時価総額は約10兆円です⁹。自動運転や電気自動車などの技術開発にも力を入れています。

 海外のライドシェアは、日本と比較して法的な規制が緩いことや、タクシーの料金が高いこと、スマホの普及率が高いことなどが背景にあります。しかし、ライドシェアに対する反発や抵抗も少なくありません。タクシー業界や労働組合は、ライドシェアの規制強化や禁止を求める運動を展開しています。また、ライドシェアに対する反発や抵抗も少なくありません。タクシー業界や労働組合は、ライドシェアの規制強化や禁止を求める運動を展開しています。また、ライドシェアの事業者は、税務や労働法などの法的な問題に直面しています。さらに、ライドシェアの普及は、都市部の交通渋滞や環境負荷の増加などの社会的な問題を引き起こす可能性が指摘されています 。

ライドシェア解禁に関する動向に注目しよう

 ライドシェアは、日本ではまだ法的に認められていないサービスですが、政府の規制改革推進会議の作業部会は、2024年をめどに新法制定の検討を提言しました。この提言によると、ライドシェアの解禁に向けて、以下のような方針が示されています。

  • ライドシェアの事業者は、運転手の資格や車両の整備、事故時の補償などに関する基準を設けること。
  • ライドシェアの運賃は、事業者が自由に設定できるようにすること。
  • ライドシェアの事業者は、運転手の労働待遇や社会保障に配慮すること。
  • ライドシェアの事業者は、交通状況や環境負荷に配慮し、必要に応じて交通管理や料金調整などの措置を講じること。

 この提言は、ライドシェアの利便性や経済効果を認めつつも、安全性や公平性、社会的な影響に配慮したものといえます。しかし、この提言がそのまま法案として成立するかどうかは、まだ不透明な状況です。タクシー業界や一部の政治家は、ライドシェアの解禁に反対する姿勢を崩していません。また、ライドシェアの事業者や利用者は、提言の内容に不満を持っている可能性もあります。

 ライドシェアは、日本の交通や経済に大きな変化をもたらす可能性がありますが、同時に多くの課題や問題点も抱えています。ライドシェアの解禁に関する動向には、今後も注目が集まるでしょう。